COLUMN 『服の向こう側』 vol.25 / WASHED 2 PLEATS TROUSERES



 

この不定期連載コラム『服の向こう側』は、普段触れることの少ない『モノ作りの裏側』や
『服が店頭に並ぶまでのバックストーリー』を届けることによって、
これまでよりほんの少し服に愛着が湧いたり興味を持ってくれたりすると嬉しいなと思い始めた。
 
 
商品を手に取ったときに一番気になるのは何だろうか?

個人的には、買い物する際に「このブランドは創業何年で…」等々の
ブランドリリースをそのままコピペしたような文章に全く興味が湧かない。


 

そんな事より、

・何故これを作ろうとしたのか?

・この商品ならではの特性は?

・作り手が本当に伝えたいこだわりは?

デザイナー、バイヤー、企画者、職人…、誰でも良い。
その商品に携わった人の生の声を聴きたいと思うのは私だけではないはずだ。



 

ウェブの検索エンジンを使えば、
自宅にいながら必要な情報の殆どが得られる現代において
『モノ作りの現場に行かなければ分からない事』
『検索エンジンでは得られない情報』を
届けることの重要性がとても高まってきているように感じる。

※その一方で、「ファッションとしての楽しさ」「ウンチク一辺倒ではない
“見て・着て・出かける(着飾る)”
ときにワクワクドキドキする感じ」も同じくらい大事だと思う。


 

これまで『RING JACKET Napoli』のシリーズを中心に書いてきたが、
勿論MADE IN JAPANのシリーズもこだわりが詰まっている。






 

洗いのかかった程良いヌケ感のあるパンツ。

この『程良い』が曲者だ。これまでこういった製品洗いの商品はイタリア製の独壇場だった。

ガーメントダイと呼ばれるこの手法を用いたイタリア製のジャケットやパンツをこれまで沢山見てきた。
確かに上手い、良い雰囲気である。
これまで個人的にも色々試してきた。


 

しかし、根っからのひねくれ者なのか?

『イタリアに出来て日本で出来ない筈がない。』と思い立ち、早速国内の洗い専門工場を当たった。




 

幾つかの工場でサンプルを見せて、「この表情を出したい!」
と打合せするも中々思うような結果は得られなかった。

所謂、反応染めと呼ばれる染料が定着しやすい染料で染める工場はこれまでの取引先であったのだが、
目指した雰囲気はこれまでの手法では出来ない。


 
 

正直に言うと簡単に出来ると思っていたが、かなり雲行きが怪しくなってきた。


 

しかし、諦めかけた時に偶然出会ったのは意外なところであった。

いわゆるドレスクロージングメーカーが使うのはウールが中心なので、
イタリアのヴィエラ、イギリスのハダースフィールド、日本の尾州といった産地に行くことが多い。


 

しかし、少し違った切り口があった方が面白いのでデニムやチノクロス等の産地である
備後地区(広島〜岡山にあるデニム発祥の地)にもう何シーズンも生地を探しに行っている。
ドレスクロージングブランドなら普通はこの産地の生地を使う…、
といった一般的な常識に縛られる必要はない。
クラシックやルーツに敬意を払いながらも、
自由な発想でモノ作りを出来るのがRING JACKETの隠れた魅力の一つだと思っている。


 

チノクロスなどの生地を散々みた後に、少し時間が余ったので近くの洗い工場に行くことになった。

その時は、生地の洗い見本を取りに行く用事だったので、製品の洗いを見に行く予定ではなかった。
しかし、行ってみると理想としている洗いのサンプルが転がっていた。
驚いて、工場の社長をつかまえて聞くと『勿論、出来るよ!』との事だった。


 

散々探したときは上手く行かなかったのだが、
何も意識していないときにスッと出会ったりするから不思議なものだ。
この仕事をしていてこういった事はこれまで何度かあった。
これだから、現場に行くのはやめられない。パソコンの前でにらめっこしていても良い商品は産まれない。
『偶然』や『出会い』を引き寄せる為に常に考えて動き続けていると光が見えてくる。


 

これまでの持論は間違っていなかったと確信した瞬間であった。





 

そんなやりとりを経てできたのが今回のパンツである。

17ssシーズンより

・股上を少し深く

・プリーツのタタミ幅を深く

・ワタリ・モモ幅を少し太く

とモデルチェンジしている。


 

持ち出しを長くして、サイドアジャスター仕様にしているのもクラシックな印象で新鮮だ。



 

先述の反応染めの手法だと全体的に均一に染まるのに対して、
今回の手法は染めた後に洗いをかけると少し色落ちするのが特徴だ。
適度にムラがあって何とも言えない雰囲気がある。


 

生地はジャーマンクロス。
ドイツ軍で使われていたものを備後地区の生地屋が復刻したミリタリー由来のものである。
ミリタリーをベースにしてるが現代的にアップデートされており、
ハリがありながらもほのかな光沢があって上品な印象だ。
「ミリタリー」「ヘリテージ」といったキーワードが人気の昨今、とても旬な生地と言える。

とは言え年間通して履けるデニムのような生地感なので長く履けるのも嬉しいポイントだ。


 

ミリタリー由来の生地をクラシックなディテールのパンツに仕立てて特殊な製品染で仕上げる。

パッと見た目は何気ないようだが、実はとてもコダワリが詰まったパンツだ。
 

少しデリバリーが遅くなったが、真打(ヒーロー)は遅れてくるのが世の常である。

この何とも言えない雰囲気のパンツを是非店頭で手に取ってもらいたい。


 

ガーメントダイはイタリアの独壇場とはもう言わせない。


 

ITEM : PANTS / RJ by RING JACKET

ART : RJ077F60G

MODEL : RJP-08

PRICE : 33,000- YEN +tax

COMPOSITION : COTTON 98% . POLYURETHANE 2%

SIZE : 42 . 44 . 46 . 48 . 50 . 52
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より色落ち感を楽しめるネイビーも入荷している。こちらも良い雰囲気だ。


ITEM : PANTS / RJ by RING JACKET

ART : RJ077F60X

MODEL : RJP-08

PRICE : 33,000- YEN +tax

COMPOSITION : COTTON 98% . POLYURETHANE 2%

SIZE : 42 . 44 . 46 . 48 . 50 . 52
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From RING JACKET creative div. manager  Okuno​

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