COLUMN 『服の向こう側』 vol.32 / ancient madder print



 

『マダープリントとは?エンシェントマダーとは?』

 

昨今、英国ヴィンテージ調のプリントタイが人気だ。
ファッション誌でも多く紹介されていて大きなトレンドとなっている。
その中で、『マダー風の…』『マダー調のプリントが…』といった注釈や説明をよく見かける。

しかし、『マダーとは?』を正確に答えることが出来る人は案外少ない。

 

実は、数年前からこの『マダー風プリントタイ』と呼ばれるものを何度か目にしていた。
PITTI(年2回フィレンツェで開催されるファッションの大型展示会)に
出展しているネクタイメーカーが多く使っていたのだ。


 

そこで、

『これはマダープリントのタイなのか?』

と聞くと

 

『いや、正確にはマダーじゃあない。マダープリントはもう出来ない。あの雰囲気を再現したものだ。』

という回答が殆どであった。

※殆ど…と言うのは、『マダープリント』を聞いても何の事か分からない人もいるのだ。

 

海外のとある人気ショップのバイヤーに聞いても

『マダープリントはもう出来ないって聞いたよ。今あるのは「マダー風」じゃあないかな?』

という回答だった。

 

『じゃあ、本当のマダープリントってどんな物なのか?』

 

今は出来なくなった?もしくは殆ど流通していない謎のタイ…
という噂だけが一人歩きしていて正確な情報をもっている人に中々出会わない。


 

ネクタイメーカーに聞いても、昔ながらの手法でやっていたプリント方法で
今は出来ないらしい…といったぼんやりとした答えだった。


 

色々手を尽くして調べていたが、
噂話程度のものや先述のようなぼんやりとした情報にしか辿りつかなかった。
そんな諦めかけていたときにふとした偶然で出会ったのが、
英国の生地メーカーであるROBERT KEYTE社。


おそらく現存するメーカーでは、
世界で唯一エンシェントマダープリントをすることが出来る稀有な存在だ。


 

ある日、
数年前に取引先の担当だった人が別の会社に移ったので挨拶にきていた。
色々と商材を紹介してもらったが…、
正直に言うといきなり取り扱うような商材は無かった。


だがふと、
先輩に「出会いや縁というものを日頃から大事にしなさい。」
とよく言われていたのを思い出したので
『次回出張に行く際にはオフィスに寄らせてもらいますよ。』と言ってその日は別れた。


 

それから数週間後。
出張先で商談をしていると次の打合せ先から
アポイントを変更して欲しいと連絡が入った。


すっぽりと時間が空いてしまったので、
どうしようか思案していた際に先述の営業担当者の顔が浮かんだ。
まぁ顔を見るだけでも、といった軽い気持ちでオフィスに向かったのだが…、
この時の何気ない気持ちとちょっとした偶然が重なって
新しい商品開発に繋がっていくとは夢にも思わなかった。

本当に『出会いや縁』は大事だ。

オフィスに着いて、また幾つか商材を見せてもらったが、
前回同様に今すぐにどうこうするといった事はなく、
少し世間話をして何となくそろそろ帰ろうかと思っていると、

『僕はあまり詳しく知らないのですが、
別の部署で生地を扱っているので時間があったら少しみてもらえませんか?』
と言われた。


 

生地は大好物である。
時計に目をやると、次のアポイントまでまだ少し時間があった。

ジャンル違いの生地だと思っていても、
時代が変わると使うようになった経験を何度か繰り返していたので
余裕があれば選り好みせずみるようにしている。


 

奥から別の担当者が来て生地見本を机の上に並べていくのを眺めていると、

ある文字を見つけて驚愕した。

 

『Madder 』

『え?これはマダープリントの事?』

 

『お〜、よくご存知ですね。最近は知らない人が殆どなのでわざわざ説明しないんですが(笑)。
そうです。今では非常に希少なマダープリントをやっている数少ないメーカーなんです。』


 

食い入るように生地を見ていると

 

『昔は、マダープリントをするメーカーが数社あったようですが皆やめていってしまったので…、
おそらく現在では世界でこのメーカーだけじゃあないですかね。
ちょうど再来週、メーカーの担当者がイギリスから色々と資料もってきます。
その際に詳しく打合せしましょうか?』


 

『是非っ!』

即答だった。

 

次のアポイント先に向かう間に頭をフル回転させる。
予算・スケジュール・縫製工場の段取り・仕様・色柄・コンセプト…。

偶然や出会いは勿論大事だが、それだけで良い商品は産まれない。
それを具現化するバイタリティとスピード感も同じくらい重要だと思っている。


 

次の打合せで『マダープリントとは?』の全容が解明すると思うとワクワクして待ちきれなかった。


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MEN’S EX 5月号(創刊25周年記念号)にて

今回のancient madder print / RING JACKET Napoli tie を取り上げてもらっている。










From RING JACKET creative div. manager  Okuno​



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